nobody knows diary

読んだ論文をまとめています。自分用の備忘録が目的ですが、全体公開することで少し緊張感を持って勉強していけるかなと思いまして…。もし間違っているところなどありましたら、ご指摘ください。

認知症の妄想・作話

松田実:認知症の妄想・作話‐その成り立ちにおける感情的側面について‐.老年精神医学 27:164‐171, 2016

 

「はじめに」のところですでに、筆者・松田実先生の言いたいことはほぼ語られているらしい。認知症は認知機能の病であるが、その基盤となる感情が不安定だと、その上にのっかっている認知機能はさらに崩れる。だから、認知症の方と接する際は、患者さんの感情を安定させてあげること、安心させてあげることが大切で、そのためには接する側の感情も安定していることが必要であるというのだ。

 

 なぜ感情面の安定が大切なのか。それは認知症者のBPSD、特に妄想は、脳器質因ばかりではなく心因の影響も受けていることが分かってきたからだ。

 

 認知症における人物誤認の特徴として、誤認の対象は近親者に限られることが多い。これを筆者は「家族誤認」と呼んでいる。この家族誤認について、器質因と心因の両方が関係していると思われる根拠をまとめている。

 

 まず器質因説を支持する根拠だが、これは家族誤認がADよりもDLBで生じる頻度が圧倒的に高いという疾患特異性と、右半球障害や前頭葉障害と関係が深いと言う部位特異性が挙げられる、と筆者は言う。

 

 心因説を支持する根拠としては、誤認対象の選択性(誤認対象が嫁だけ、等)や症状の変動性(家にいる時だけ誤認が生じ診察室では誤認が生じない等)が挙げられる。

 

 このように器質因と心因が重なって誤認症状が形成されている、と考えるのが最も妥当のようだ。

 

これまで作話や妄想の病態機序として、認知神経心理学では、記憶空白の穴埋め的反応、時系列の障害、検索モニターの障害などが想定されてきたが、最近は感情的な側面の重要性が見直されつつある。想定される心理的な機序としては、wish-fulfillment(願望充足)、self-defense(自己防衛)、self-coherence(自己一貫性、すなわち過去の自己イメージへの執着)などが重要視されている。認知症の作話や妄想では、こうした心理的機序が働いているとおぼしき例が多い。