nobody knows diary

読んだ論文をまとめています。自分用の備忘録が目的ですが、全体公開することで少し緊張感を持って勉強していけるかなと思いまして…。もし間違っているところなどありましたら、ご指摘ください。

妄想性同定錯誤症候群 カプグラ症候群を中心とした発現機序

山田真希子,大東祥孝:妄想性同定錯誤症候群の成立機構.老年精神医学雑誌 21: 661-664, 2010

 

Chirstodoulouは、カプグラ症候群、フレゴリ症候群、相互変身症候群、自己分身症候群の4つの症候群がいずれも脳損傷後(とくに右半球損)に生じることから、脳器質的要因を重視し、妄想性同定錯誤症候群としてまとめた。本稿では、これら4つの症候群の中で、もっとも認知神経科学的に研究が試みられているカプグラ症候群について、そのメカニズムを再考している。

 

カプグラ症状の発現機序について、①なぜ妄想誤認が生じるのか?、②誤認を否定する事実を与えられたとしても、なぜ患者の妄想誤認は修正されずに継続するのか?この2点の論点でまとめられている。

 

  1. なぜ妄想誤認が生じるのか?

EllisとYoung, HirsteinとRamachandorannなどの研究に言及し、相貌認知経路離断による「親近感/情動的なつながりの欠如」によって生じるという説を紹介している。しかし、「親近感が生じない」ことの唯一の客観的根拠となる皮膚電位反応の欠如について、いくつか問題点が指摘されていることにもふれている(例.カプグラ症状で時々同時に見受けられる物や場所に対する誤認については説明されていない等)。

 

  1. 誤認はなぜ修正されずに継続するのか?

間違った信念が形成される背景には、信念評価システムの破たんが考えられている。患者の信念が修正されることなく継続する背景には、確証バイアスという認知特性が考えられている(Young,2008)。患者は確証バイアスにより、妄想的信念を確証する事実を探そうとし、それに反する事柄は黙殺し小さい価値しか与えなくなる。

この他にも、通常ならば妄想に反する真の事実と誤信を照らし合わせることで矛盾を見出して誤信を修正する機能が障害されていることも、カプグラ症候群の訂正不能性と持続に関連しているのではないかとしている。

 

《感想》

妄想が訂正不能で持続する要因についての考察が、自分の研究を進める上でも大変参考になる。