nobody knows diary

読んだ論文をまとめています。自分用の備忘録が目的ですが、全体公開することで少し緊張感を持って勉強していけるかなと思いまして…。もし間違っているところなどありましたら、ご指摘ください。

コタール症候群について

小泉明:コタール症候群.分子精神医学 4: 45-48, 2010

 

「精神科領域の用語解説」としてコタール症候群について説明している。

  • 歴史的経緯

 Cotarは1880年、「不安メランコリーの重症型における心気妄想について」という演題で、奇妙な心気妄想を呈するX嬢について報告している。彼女は「脳も神経も肺も腸もなく、瓦解した身体は骨と皮だけだ」と言い、さらには「魂も神も悪魔も存在しない」「体が壊れてしまっているので、生きるために食べる必要などないが、自然に死ぬこともできず、火あぶりにされない限り、永遠に生き続けるのだ」と訴えたと言う。ここからコタールは「重症不安メランコリー」として次の6つの性状を見出した。

①メランコリー性不安、②劫罰あるいは憑依観念、③自殺あるいは自発的事象傾向、④無痛感覚、⑤種々の器官、身体全体の非存在、⑥決して死ぬことができないという観念。

 

Cotarの死後、Regis(1983)において、上記6つの症状の総体をCotar症候群という名で規定し、「最もしばしば、個人の全般的あるいは部分的な非存在あるいはその破壊といった心気妄想つまりは否定妄想に限定されることが多い」としている。

 

  • 疾患

Cotar症候群は、症候群である以上、あるあゆる疾病にみられるものであり、うつ病統合失調症、妄想性障害、頭部外傷、進行麻痺、アルコール幻覚症、認知症などがある。このためコタール症候群に対しての特別な治療があるわけではなく、あくまで原疾患の治療をするべきである。

 

 

《感想》

コタール症候群については知ってはいたが、Cotar先生がどんな人なのかまでは知るすべもなかった。

「一私立精神病院に勤務していた勤勉だが野心に乏しい人物だが、自身の記述したX嬢のおかげで、フランスのみならず世界の精神医学の症候学の分野に、その名を刻印することになった」

「パリ近郊の私立保養院でひっそりと勤務し、時折近隣の公園を散歩する姿が見られた」

「患者と家族を愛した地味な一精神科医

など、Cotar先生の人となりが分かるような記述があり想像がふくらむ。