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nobody knows diary

神経心理学とその周辺のことについて、読んだ論文をまとめていきます。

妄想と脳萎縮

David N. Levine, Adrian Grek: Thea anatomic basis of delusions after right cerebral infarction. Neurology 1984; 34: 577-582.

 

背景

 

妄想とは理論や経験によっては訂正されない誤った確信のことである。右半球損傷後の患者では妄想が生じる場合があるが、皆がみな妄想を呈するわけではない。筆者らは、右半球損傷後に妄想を呈する患者と、そうでない患者を比較し、妄想が生じる要因について調べている。

 

方法

 

対象は認知症や神経疾患の既往のない右半球損傷患者で、妄想患者は9名、対照群は16名。それぞれの患者のCT画像から、病巣の位置・大きさ・萎縮の程度などを調べた。

 

結果

 

病巣の位置について調べたところ、妄想を呈する患者に特有の損傷部位というものは認めず、対照群と比べても病巣の分布に殆んど差は認めなかった。唯一、前頭側頭領域は妄想患者で多かったが、統計学的に有意な差を示すほどではなかった。

病巣の大きさと妄想の関連はなく、病巣が小さいほど妄想が生じにくいという傾向も確認できなかった。

妄想と脳萎縮の程度には明らかな関連性が示唆された。萎縮が進んでいるほど妄想が発現しやすいことが判明した。

 

考察

 

今回の研究では、病前からの脳萎縮が妄想の発生に決定的な影響を及ぼすことが示唆された。一方で、病巣の位置や大きさと妄想との間に明らかな関連性は認められず、このことは右半球の脳梗塞後、無事に残された脳の状態、特に左半球の状態が重要な意味を持つものと考えられた。

筆者らは、脳梗塞だけでも、もしくは脳萎縮だけでも、妄想が生じるには十分でないということだ。右半球の限局した病変と、より広範な脳萎縮が、相互に影響し合って妄想が生じると指摘している。