nobody knows diary

神経心理学や言語病理学について、読んだ論文をまとめています。

Coltheartによる妄想の神経心理学

Max Coltheart: The neuropsychology of delusions. Ann. N. Y. Acad. Sci., 1191: 16-26, 2010 ■はじめに ノーベル賞受賞者のジョン・ナッシュはなぜ自分は神の左足で、いずれは南極大陸の皇帝になると考えるに至ったのか?妄想的信念はきわめて奇怪で謎に…

視床失語について

中野明子,下村辰雄:左視床と失語.BRAIN and NERVE, 67: 1495-1498, 2015 1 左視床損傷に関する研究 言語機能における左視床の役割についての研究は古くからあった。多くの研究により、左右の視床が機能的に等価ではなく、右利き者の場合、失語症状が左視…

大東先生による「妄想の神経心理学」

大東祥孝:神経心理学から妄想にどこまで迫れるか‐「妄想の神経心理学」にむけて‐.神経心理学,29:228‐235 はじめに 日本の神経心理学の草分けである大御所、大東博司教授の最初の記念碑的著作は「失語・失行・失認」である。その5年後の改訂版では「巣症…

老人性難聴と心血管系の関係性について

RaymondH. Hull, Stacey R. Kerschen: Can Improved Cardiovascular Health Enhance Auditory Function?. 心臓血管の健康増進は聴覚機能を良くするのか? (The Hearing Journal. 71, 22-23, 2018) ☞老人性難聴の発症に影響を与える因子には、遺伝、騒音暴露…

失構音の下位分類

高倉祐樹,大槻美佳:失構音の下位分類とその病態の発現機序について. 言語聴覚研究,13;258‐274,2016 ずっと読もう読もうと思っていた論文。 【はじめに】 失構音とは「構音のひずみ」と「音の連結不良」を主要症候の中に含む発話症状のことである。従来…

抗NMDA受容体脳炎における純粋精神病エピソードの頻度と症状

Matthew S. Kayser et al. : Frequency and Characteristics of Isolated Psychiatric Episodes in Anti-N-Methyl-D-Aspartate Receptor Encephalitis. JAMA Neurol, 70: 1133-1139. 2013 【はじめに】 抗NMDA受容体脳炎は自己免疫性疾患のひとつであり、NMD…

抗NMDA受容体脳炎と精神症状の関係

筒井幸ら:抗NMDA受容体脳炎と精神症状.精神医学,57:795-801,2015 抗N-methyl D-aspartate (NMDA)受容体脳炎という新たな疾患概念は、2007年Dalmauらにより提唱された。本疾患は辺縁系を首座とする自己免疫性の脳炎で、意識障害のほか、精神症状、けいれ…

精神障害者保健福祉手帳診断書について

橋本圭司:精神障害者保健福祉手帳診断書(高次脳機能障害).総合リハ;193~197,2012. 日本では失語症以外の高次脳機能障害は、「器質性精神障害」という診断名のなかにふくまれる(ちなみに失語症の場合、身体障害の3級、4級の認定が可能)。 器質性精…

WMS-R

中島恵子:実践講座 神経心理学的検査の実際 WMS-R.総合リハ,44:321-324.2016 WMS-Rは、1987年アメリカでつくられたウェクスラー記憶検査改訂版をもとに、2001年杉下らにより刊行された。 【使用目的と特徴】 5つの記憶の側面から記憶障害をはかる記憶…

鼻咽腔閉鎖不全へのアプローチ

福永真哉ら:鼻咽腔閉鎖感覚の運動訓練を中心としたアプローチで鼻咽腔閉鎖不全が改善した痙性ディサースリアの1例.ディサースリア臨床研究,3:21-25,2013 鼻咽腔閉鎖不全(velopharyngeal incompetence; VPI)を伴う構音障害例に対して、従来のブ…

「高齢期難聴がもたらす負の影響」 と 「介入の可能性」 について

内田育恵:高齢期難聴がもたらす影響と期待される介入の可能性.音声言語医学 56:143‐147.2015 65歳以上の高齢難聴者は全国で1500万人に上るとされ、超高齢化社会である日本においては緊要な課題である。この稿では、前半では高齢期難聴がもたらす個人や社…

老人性難聴の予防ってできるの?

山下裕司,菅原一真:感覚器の老化と抗加齢医学‐聴覚‐.日耳鼻 119:840‐845,2016 老人性難聴とは生理的な年齢変化により生じる難聴のことで、高齢者のQOLを著しく障害する。罹患者は多く、今後社会の高齢化が進めば、より一層深刻な問題となる。 その特徴と…

認知症の妄想・作話

松田実:認知症の妄想・作話‐その成り立ちにおける感情的側面について‐.老年精神医学 27:164‐171, 2016 「はじめに」のところですでに、筆者・松田実先生の言いたいことはほぼ語られているらしい。認知症は認知機能の病であるが、その基盤となる感情が不安…

妄想性同定錯誤症候群 カプグラ症候群を中心とした発現機序

山田真希子,大東祥孝:妄想性同定錯誤症候群の成立機構.老年精神医学雑誌 21: 661-664, 2010 Chirstodoulouは、カプグラ症候群、フレゴリ症候群、相互変身症候群、自己分身症候群の4つの症候群がいずれも脳損傷後(とくに右半球損)に生じることから、脳…

重複記憶錯誤について

林竜一郎:急性期脳卒中診療における重複記憶錯誤.Modern Physician 30: 11, 2010 重複記憶錯誤について、神経内科医にむけられて書かれたものと思われる。 Devinsky(2009)を引用して、「その機序は現時点では不明瞭だが、自己認識や親近性の判断に優位な右…

コタール症候群について

小泉明:コタール症候群.分子精神医学 4: 45-48, 2010 「精神科領域の用語解説」としてコタール症候群について説明している。 歴史的経緯 Cotarは1880年、「不安メランコリーの重症型における心気妄想について」という演題で、奇妙な心気妄想を呈するX嬢に…

Feinbergが報告するフレゴリ症候群の一例

Todd E. Feinberg, Lisa A. Eaton, David M. Roane and Joseph T. Giacino: Multiple Fregoli delusions after traumatic brain injury. Cortex, 35: 373-387, 1999 背景 フレゴリ症候群は妄想性同定錯語症候群(以下、DMSと略す)の一つである。DMSには他に…

妄想の展開

Owen Box, Hana Laing and Michael Kopelman: The Evolusion of Spontaneous Confabulation, Delusional Misientification and a Related Delusion in a Case of Severe Head Injury. Neurocase 1999; 5: 251-262 背景 妄想や作話と前頭葉機能障害の関係性に…

妄想と脳萎縮

David N. Levine, Adrian Grek: Thea anatomic basis of delusions after right cerebral infarction. Neurology 1984; 34: 577-582. 背景 妄想とは理論や経験によっては訂正されない誤った確信のことである。右半球損傷後の患者では妄想が生じる場合がある…

脳梗塞後に生じたフレゴリの錯覚

Karel w. de Pauw, T. Krystyna Szulecka, Tracy L. Pltock: Fregoli Syndrome after Cerebral Infarction. The Journal of Nervous and Mental Disease 1987, 433-438. 背景 フレゴリの錯覚の特徴は、既知の人物が未知の人物に変装していると確信することで…

フレゴリの錯覚

兼本浩祐:フレゴリ―の錯覚.精神科治療学12:243‐249,1997 筆者はこの稿の中で、フレゴリの錯覚を、 ①分裂病が背景にあり準単数妄想的に経過するものを「フレゴリ―症候群」 ②脳器質性疾患に散見され、重複記憶錯誤などとの関連も否定できものを「フレゴリ―…

フレゴリの錯覚と重複記憶錯誤の関係性について。

兼本浩祐:フレゴリ―症候群と地誌的重複記憶錯誤を示し側頭葉に顕著な萎縮を示した1例.精神医学33:195‐197,1991 フレゴリー症候群とは、特定の何者かが様々の形に姿を変えて自分を迫害するという稀な訴えの事である。 これまでは、分裂病(原文表現まま)…

てんかん性視覚保続発作について

當間圭一郎,田口敬子,池田昭夫ら:てんかん性視覚保続発作に内側側頭葉と頭頂葉の関与が示唆された1例.臨床神経学 52: 651-655, 2012 視覚保続は、 対象が実際にあるべき範囲を超えて多数みえる、空間的視覚保続(polyopia)と 視覚対象が除去された後に…

形と色を認識するしくみについて。

小山慎一,河村満:形と色を認識するしくみ.BRAIN and NERVE 59: 31-36, 2007 大脳の視覚情報処理は腹側と背側に分かれており、 背側は、運動情報や位置の処理を 腹側は、形や色についての情報の処理を それぞれになっていると言われている。 その後、より…